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製作工程

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漆刷毛の製作工程−1−毛洗い

 1 使用人毛

1975年ぐらいまではすべて日本人の毛髪を使用してましたが、1989年頃から日本人髪毛の集荷システムは壊滅状態となり、 集めることが不可能になりました。

以後90%は中国産毛髪を使用するようになりました。

しかしながら、中国の経済発展に伴い入手する毛髪も、年々現在の日本毛髪の切り毛とほとんど変わらない状態になりました。

それならばと、兄弟全員が美容・理容の仕事をしているわたしの親戚を通じて集めた現代日本人毛髪を無印半通しに使用開始しました。


  2 毛洗い(けあらい)

漆刷毛には切ったばかりの髪毛ではなく、ある程度の期間が経って脂気の抜けたものを用います。

けれど、私は塩素などの強い薬品は現在は一切使用していません。あまりに痛めてしまうからです。

煮立った熱湯で何度も良く洗い、流水ですすぎを繰り返します。

それをゆっくりと天日で干して乾かします。急いではいけません。

   3 毛揃え(けぞろえ)

洗い終わった髪毛の長さを揃える作業です。この工程は一番単調でしかも根気のいる大変な作業です。

漆刷毛の製作工程−2−毛揃え

漆刷毛の製作工程−2−毛揃え2

江戸以来の伝統技法で丁寧におこなっています。 ここを省いては刷毛の具合に響いてきます。

私は、この工程を省く為に、毛髪の両端をを刃物で切断することはしておりません。

 4 毛固め(けがため)

漆刷毛の品質を決める一番重要無な工程。

その作業は生漆(きうるし)を使った、刻々と乾いていく麦漆を使用するために、仕事を始めたら終わるまでほとんど席を立てない作業です。

漆刷毛の製作工程−3−毛固め1

漆刷毛の製作工程−3−毛固め2

温度や湿度、毛固めしようとする毛板の巾、厚さなど様々な条件によって違う、この毛固め用の糊漆の調製は、出来上がりの正否を決める重要なものであります。
 

揃えた髪毛の一本一本に、櫛で梳かしながらこの糊漆を染み込ませていきます。

1枚の毛板を作るのに最低約150回も櫛を通します。

ですから、1日10枚の毛固めで約1500回、4日もやると6000回にものぼり、肩が痛くなり腕も上がらないほどになります。

一番気を使い体力も使う工程です。


 丁寧にやらなければなりませんが、麦漆は刻々と乾いていき、髪毛は 急速に締っていきます。ゆつくり作業していると今度は櫛が二度と通らなくなってしまいます。まさに時間との勝負です。

 5 毛板の乾燥 (けいたのかんそう)

この毛板の乾の重要な点は自然乾燥でゆっくりとやっていくことです。人工的に急速乾燥させてしまうと、反ったり割れが入ったりしてしまい、今までの工程がすべて無駄になってしまいます。

また、表裏均一に乾燥させるために一定時間ごとに裏返しをしてやらねばならず、ある程度の乾燥が進むまでの3−4日は外出もままなりません。

とくに気温の高い夏場は要注意であり、できれば毛固めの工程には避けたい季節であります。

漆刷毛の製作工程−4−毛板の乾燥

漆刷毛の製作工程−5−板作り1

 6 板作り

漆刷毛師には、髪毛を扱うかもじ屋の仕事の他に、板作りの指物師のような仕事も要求されます。

1960年頃までは檜の丸太を東京・深川の木場の専門問屋より購入し、鋸、鉈を使って板作りをしていました。

1970年頃から製材所で所定の厚さの板にしてもらえるようになり、少し楽になりました

しかし、最終的には、鋸、鉋を使って、必要な長さに切り、巾寸法に加工し、平らに削ることは江戸時代から変わりません。

無印半通しにはアラスカ檜(スプルース)を使います。


漆刷毛の製作工程−6−巻込作業1

 7 毛裁ち (けたち)

完全に乾燥して硬く締まった、まるで昆布のようになった毛板を鉋刃で切断します。

抜け毛がでないように、もったいないようですが、所定の長さ以上を使用いた します。

そして、長さを切った毛板を、作る漆刷毛の巾に合わせて鉋刃でキッチリと裁ち落としていきます。

刷毛板から少しでもはみ出ていると、次の巻込工程で隙間ができる原因になりますので、板と毛板の面合わせを指先の感覚だけをたよりに調べて正確に裁っていきます。

指先も漆刷毛師にとって大事な道具のひとつです。


 8 巻込 (まきこみ)

この工程が2番目に大事なところです。

写真にある通り、紐を口にくわえて行う作業ですが、これは紐の引っ張り加減を口で直接に感じ取り、調製するためです。

次に、漆刷毛の巾に合わせて製作してあるクサビを表裏、上下と4枚打ち込んで締めていきます。

あぐらをかいて座っている自分の左膝を台として叩いていくのです。わたしは台の上で叩いたりはしません。

こうすることで、クサビの入り方、紐の締め具合が体ではっきりと感じ取れるのです。 この作業も、1日やると立ち上がれないほどになってしまいます。

これらの工程でもわかるように、手、口、膝も使い、体全部が製作の大事な道具です。一切、 万力やプレスなど使用していません。

ちなみに2010年、40年間使い続けた左膝の半月板は割れてしまい2013年には歯も折れてしまいました。

父親・八世 泉清吉は、入れ歯になったら漆刷毛師は引退すると言い続けていました。 私も同じ覚悟でおります。

漆刷毛の製作工程−6−巻込作業2

 9 乾燥

巻込の終わった刷毛は、できる限り長期間、自然乾燥させます。決して急いで強制乾燥させてはいけません。

本来ならば、漆刷毛は1年がかりで製作するものです。

現代ではそうもいかずに、無印半通しはできるだけ乾燥の時点までの在庫をしておくようにしています。

ですから、無印半通しは完成の在庫切れの場合でも1週間程度でお送りできるのです。


 10 仕上

十分に乾燥の終わった漆刷毛を、鉋で徐々に板を削って薄く仕上げていきます。

 11 毛摘み  (けつみ)

ここも大事なポイントです。また、刷毛の出来具合の最終チェックでもあります。

切出した刷毛先を鉋で尖らせる作業です

尖らせた毛先を見て、板と毛板との接着状態、毛の密度の状態を確認します。

問題がなければようやく1枚の漆刷毛が出来上がったことになります。

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